古風な世情長篇小説
誰も腰を下ろさなかったあの腰掛け
酷無極 · AI創作 · 4087 字 · 約 11 分
許慎は市で薄い灰紫の布をひと反見かけ、立ち止まった。布売りは彼を覚えていて、またお母さんに春着を一枚作るのかと聞いた。彼は、いや、と答え、手を伸ばして布の端に触れた。柔らかい布だったが、あの日に水で濡れた杜茵の布より少し色が薄かった。値を聞き、また手を引っ込めた。店主は高いと思われたと見て、後ろから別の値を言ったが、彼はもう傘直しの店先まで歩き、骨の欠けた傘を眺めるふりをしていた。
傘直しの男は、魏策に傘の柄を削ってもらった当人だった。新しい柄を膝に載せていた。両端はきれいに丸く、握るところには浅いくぼみが一筋あった。任家では小さな弟子まで一人前になったと男が褒めると、許慎は少し笑い、こういう小物ならあいつはとっくに作れますよ、と言った。口にしてすぐ後悔した。わざわざ「小」とつけないと、自分のほうがまだずっと上にいるように見せられないかのようだった。
「二度試させてくれたよ」と傘売りは言った。「最初は太いと思って、削ってくれた。二度目はもう削らずに、実際に握ってしばらく歩いてから来てくれってね」許慎は傘の柄を受け取った。わずかなくぼみがちょうど掌の付け根に当たり、丸みには文句のつけようもなかった。彼は干し杏を小さな包みに一つ買い、帰宅すると東の部屋の戸口に置き、戸をたたいて、杜茵に味見してほしいと言った。
戸の内側に人がいたが、笑い声は杜茵のものではなかった。粗布の短衣を着た老人がオンドル式の寝台の端に腰かけて足に布を巻いており、脚のそばには半ばほどいた長靴が広げてあった。杜茵は老人を父さんと呼び、干し杏を受け取ると、まず二つを父の手に握らせた。許慎は戸口に立ったまま急にもじもじし、まず杜のおじさんと呼びかけ、それから何日か泊まっていかれるんですかと、まるで自分が招いているような聞き方をした。
杜済(ドゥー・ジー)は顔を上げ、不揃いな歯を見せて、娘が自分の靴を型にして、夏も冬も履けるよう仕立て直すのだと言った。住まいは近くの柳井巷で、明朝は酒蔵の荷車の出入口を見張る仕事があるから、今日はどうしても帰らなければならない。そう言いながら膝に置いた靴をなで、杜茵が筒を広げすぎたので、早足だと風をはらみそうだとこぼした。杜茵は、しゃがむたびに留め具をはじき飛ばすから広げるんでしょう、と言った。
許慎は笑い、手を伸ばして長靴の筒の寸法を示した。老人は長靴を胸に抱え込み、大工の尺で自分の足を測るな、測られたらまた代金を取られると言った。杜茵が腰を折って笑い、許慎はそこでようやくからかわれていると気づいた。工具袋を戸外へ移し、戸口のわずかな光をもう遮らないようにした。
阿穂も出てきて、年長者がいるのを見ると、せわしく湯を沸かした。いちばんきれいな椀を出して杜済の前へ運び、歳を聞き、家にはほかに誰がいるかと尋ねた。杜済は鶏が二羽いる、白いのは卵を産まず、まだらのは白いのの背にばかり乗る、と答えた。阿穂は彼が話をそらしたと気づかず、さらに杜茵の縁談は決まったのかと尋ねた。杜茵は湯を受け取り、父は今日は長靴を試しに来たのだと言った。
許慎は急いで通りで見た傘の柄の話を始めた。杜済(ドゥー・ジー)も竹細工をいくらか心得ていたので、二人は中庭に座って傘の骨の話をした。話が弾むと、杜済は枝を一本取って身振りで示したが、長さがまちまちで、許慎は、出来上がっても頭の半分しか隠れませんねと笑った。老人は帽子を取って頭の半分にかぶせ、残りの半分は日に当てておくんだ、と言った。今度は南の部屋にいた阿穂も声を出して笑った。
杜済が帰るとき、許慎は路地の入口まで見送った。老人は娘が縫った上着を肩に掛け、手直しの済んでいない古靴はまだわずかに傾いていた。杜茵は小さい頃、負けず嫌いでね、飴を一つ取られたら通りの端から端まで追いかけたもんだ。でも誰かの世話を頼まれると、たいていろくに考えもせず引き受けちまう、と言った。許慎が優しい人ですねと言いかけると、老人は返事を待たず、もう豆腐売りの方を向いて、今日は崩れた豆腐なら何文安いかと尋ねていた。
その夜、杜茵は干し杏を半包み返しに来て、一人では食べきれないと言った。阿穂も確かに食べたのに、許慎の耳には「一人」という言葉だけが残った。半包みの杏を懐に入れると、しばらく胸が温かかった。翌日、杜茵の水を運ぶとき、あの裏地はもう薬舗に納めたか、周支配人の手は少しよくなったか、と尋ねた。
杜茵(ドゥー・イン)は、納めてきた、手はまだうまく動かないそうだ、と言った。水桶はいったん台に置き、底の泥を拭き取ってから部屋に運び入れた。許慎が立ったまま帰らないので、彼女が顔を上げると、ようやく彼は、今度また戸や窓の話が出たら、あの新しい戸で改めて金を取るつもりはないと、一言伝えてもらえないかと聞いた。杜茵は桶を拭いた布を畳み、元の場所に戻した。
「あの人はまだ、その戸を欲しがっているの?」と彼女は尋ねた。許慎は、元の戸はしっかり直したが、やはり下を削ってあるので形がそろわないと言った。杜茵はさらに、周同は作り直してくれと頼んだのかと尋ねた。彼は答えず、代わりに、残金はもう返し、材木も別に買った、作り終えてあそこへ置けば薬屋の人もいずれ目にするだろうと言った。
窓の外で黄豆(ホワンドウ)がくしゃみをして、鼻先を柵にぶつけた。杜茵は戸口の外にある小さな腰掛けを見た。長いこと日に照らされ、雨に打たれて、座面には木目が筋になって浮いていた。以前、許慎が彼女のために物干し竿を取りつけたとき、足を載せたのがその腰掛けだった。あの日、彼が脚を押さえていたとき、彼女はもう少しで手を伸ばしてその肩に触れるところだった。今、彼はすぐそばに立っているのに、座ってもらうための言葉がひとつも見つからなかった。
「服を届けに行くのであって、ついでにあの人の戸の仕事を頼みたいわけじゃない」と彼女は言った。「あの人は服を買う。何を買うか分かっている」許慎は「買う」という言葉を聞き、自分も、そこに込めたわずかな思いも、彼女に冷たく値踏みされたように感じた。戸口に立てかけた道具を取り、魏策のあの話を君も聞いたのかと尋ねた。杜茵はすぐには問い返さず、むしろ最後まで話すよう促した。
彼は、あのとき石段が高くなっていて、いろいろな仕事が重なり、仮に調整用の楔を使っているのは店でも皆知っていたと言った。話の途中で、不意に止まった。杜茵は母のように次の言葉を代わりに続けず、任泉のようにどの工程が間違っていたかを指摘もしなかった。部屋には針先が厚い布を通るかすかな音しかなく、彼には、さっき自分が口にした「皆」という言葉が聞こえた。それは一人残らず押さえつけられるほど軽かった。
「魏策はもともと、石工が帰ったか見に行っただけだ。」と彼は言った。「あとから、あいつが測り違えたと思わせたのは俺だ。」ひどくゆっくりとした言い方で、最後には爪の間に刺さった見えない棘を押し出すようだった。杜茵は針を持つ手を一瞬止め、周同の前でもそう言ったことがあるのかと尋ねた。彼はないと答えた。
杜茵は針を布の端に刺し、今日は急ぎの仕事があると言った。許慎はしばらく立っていたが、戸口を出た。干し杏の半包みはまだ懐にあった。井戸端まで来て一つ取り出して口に入れると、歯の根が浮くほど酸っぱかった。干し杏を持ってもう一度この部屋に入るつもりだったのに、結局、種を一粒長いこと口に含んだまま、吐き出す場所が見つからなかった。
庭で彼を呼ぶ声がした。路地の外を通りかかった魏策が、借りていた短い鑿を返しに入ってきたのだ。もう城南で一軒、窓を直す小仕事を請けていた。材もわずかで手間も小さいが、寸法はすべて自分で取った。許慎は袋からのぞく物差しを見て、石段は忘れずに測り直せよ、と言いかけた。その言葉はついに口から出ず、長い錐は要るかとだけ聞いた。
魏策は今回はいらない、古い窓だから、深い穴を開けるより釘を打つ方がいいと答えた。短い鑿を袖口で拭いて許慎の手もとに置いた。研ぎ直したばかりの刃が水のように光っていた。許慎があの傘を作るのにどれくらいかかったかと聞くと、魏策はまず一日、細かく磨くのにさらに半日、早い方じゃないと答えた。二人は井戸端に立っていた。口にできるのは、もうそれくらいだった。
夕食時、阿穂は杜家の老人が許慎をどう見ていたか尋ねた。硬い餅を割っていた彼が意味を取れずにいると、母は杜茵の年齢へ話を回し、娘が暮らしていくには頼れる人が要るとも言った。許慎は餅を置き、いつもより少し大きな声で言った。「あの人の父親は、俺を見に来たんじゃない。」阿穂は彼をにらみ、一碗の水、一切れの餅で、自分はいったいまた何を言い間違えたのかわからなかった。
許慎は外へ出て、槐の下に暗くなるまで立っていた。枝にはまだ葉がなく、細い梢のあいだに狭い空が見えた。庭の中では杜茵が方暁に、きつく締まって抜けなくならないよう、布に少し大きめの糸の輪を残すのだと教えていた。方暁が、大きいと見栄えが悪くないかと聞くと、まず通せるようにして、見栄えはそのあとよと答えた。許慎はふいに手の甲を目に押し当てた。
戻ると、母はもう冷えた餅を熱い汁に浸していた。杜の家のことはもう尋ねず、古い家に一度戻って、裏手がまだ雨漏りするか見たいとだけ言った。許慎の手が椀の縁で止まった。石口の洪の主人から、一昨日、人づてにあの奥の梁はいつ取りに行けるのかと聞かれ、暖かくなってからと先延ばしにしたばかりだった。今また母が言い出すのを聞いて、この庭には、暗がりにさえ身を隠せる所がないような気がした。
彼は一緒に行くと約束し、二十七日を選んだ。阿穂は城門を出る車の便をひととおり確かめ、古い家の鍵を出し、歯の切り込みを丁寧に拭いた。杜茵から返された半包みの干し杏は、まだ四つ残っていた。彼は誰が返したか言わず、母の前に置いた。阿穂は一つ食べ、酸っぱすぎると思いながらも置くのは惜しく、舌先で少しずつ味わった。顔の皺がひとところに寄った。
· この章 終 ·
本書はAIの支援を受けて独自に執筆した作品で、劉長卿の『逢雪宿芙蓉山主人』と当サイトの短篇『雪の夜、戸を開けて待つ』をもとに長篇化しました。人物、県城、経路、筋立てはいずれも唐代の趣を持つ架空の創作であり、原詩の翻訳や詩人の伝記ではありません。
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