古風な世情長篇小説
木工の店に残された櫛
酷無極 · AI創作 · 4844 字 · 約 13 分
許慎は袋から長い錐を取り出し、窓の下に広げた。軸はまだまっすぐだったが、刃先は二か所鈍っていた。先日、新しい戸に長い穴を開けた跡だった。油布できれいに拭き、雨の夜に濡れた柄を外し、丸一日干してから、改めて取り付けた。阿穂はしばらく見て、どこか壊れたのかと尋ねた。壊れていない、売るつもりなのだと彼は言った。
母はすぐに背筋を伸ばした。息子が自分の片手を金に換えようとするのを目にしたかのようだった。許慎は母が口を開く前に短い錐を脇に置き、今までやってきた細かい仕事なら、これで足りると言った。長錐はいい道具だが、どんな木にも欠かせないわけじゃない。本当に深い穴を開ける仕事が来たら、まずは自分に引き受けきれるかを考えないといけない。
母はもう引き止めなかった。息子が出ていくと、やはりあの油布を手に取って眺めた。初めて錐を買って帰ったときについた黄色いグリースが、少し残っていた。いつか自分の作業台を構えれば、人が貸してくれなくても困らないと、あのとき息子は言った。母の耳には「いつか」だけが残り、息子が上へ進んでいくと思うと、自分までいくつか若返ったような気がした。
許慎はまず車の修理屋へ行った。店を仕切る男は刃先を見て、買値より百八十文安い三百文なら出すと言った。三か月しか使っていないと許慎が言うと、男は地面の、歯の欠けた車輪を指し、中古を買うときは相手が手放しがたいかどうかなど聞かない、今日いくらなら出せるかだけだと言った。わざと冷たくしているわけではなかった。背後には客が代金を払わず引き取りにも来ない車が二台残っていた。許慎はそれを見て、承知した。
錐を渡してもすぐには帰らず、薬屋の戸の話をこの前聞いたかと店の責任者に尋ねた。相手は少し居心地悪そうに、たまたま耳に入っただけだ、どの職人も手が確かというわけじゃないことは知っている、と言った。許慎は三百文を袋に入れ、あの石段を測り直さなかったのは自分で、あとから動く楔を使うと決めたのも自分だと話した。魏策(ウェイ・ツォー)は石工がいるか見に行っただけで、自分に代わって寸法を測り違えたわけではない。
番頭は錐の軸に目をやった。急に二つのことが一つの台にひしめいたようだった。仮の楔をかませたことは任泉も知っていたのか、と聞いた。許慎は、一晩だけ仮に置くのは知っていたが、自分が取り替えずに戸を引き渡したことは知らなかったと答えた。言い終えると喉が渇いた。あのころどれだけ忙しかったかとは言い足さず、今後、自分に代わって事情を説明してくれとも頼まなかった。番頭は、うむとひと言返し、長い錐を前もって用意していた木の棚に置いた。
任家の店先では材を下ろしているところだった。魏策が片端を肩で支え、もう一人の店の者にゆっくり下ろせと声をかけた。許慎も手を貸し、三人で木を平らに置いた。彼が来たからといって、手を止める者はいなかった。地面に切れた古い糸が落ちていて、魏策の靴先に絡んだ。許慎がかがんで取ってやろうとすると、魏策は先に自分で蹴り払い、物差しを抱えて別の仕事に向かった。
許慎は百二十文を取り出し、任泉に返した。銭をひもごとに数えて渡し、任泉も数えた。目の前の相手が気まずそうでも、数える手順は省かなかった。本来もっと早く返すべき金だと言われ、許慎はそのとおりだと答えた。任泉は金をしまい、長錐はまだあるかと聞いた。許慎は車の修理屋に売ったと答えた。任泉は少し考え、あそこの錐台ならあの錐に見合う、無駄にはなるまいと言った。
許慎は店の隅に取っておいた短い木材も、何本かまとめて持ち帰るつもりだった。任泉は、どれが値を帳面につけた材で、どれがまだ店のものか、自分で確かめるよう言った。彼はしゃがんで一本ずつ返し、黒い節のある材に見覚えがあった。前に何気なくそこへ置いたとき、あとで帳面につけるつもりが、忘れたままだった。その一本は残し、金を払った三本だけ抱えて帰った。任泉は見ていたが、彼に代わってその手間を省いてやりはしなかった。
店の奥には取り付けを待つ小窓が一枚あり、任泉が鉋で縁を削っていた。許慎はそばに立ち、薬舗の石段、短くなった上の軸、取り替えなかった戸の受け台のことを、初めから話し直した。「あとになって、測り直しを間違えたのは自分だと魏策に認めさせようとまで思いました」と聞くと、任泉は鉋を握る手を止めた。ずいぶんたってから言った。「こいつは、やり直しで済む話じゃない」
魏策は別の作業台の脇にいて、自分の名が聞こえても近寄ってこなかった。許慎はそちらへ行き、あのとき石工が帰ったか見てこいと頼んだことと、あとから口にした測り直しは別のことだ、二つの言葉をもう一つに混ぜてはいけないと言った。魏策の顔はゆっくり赤くなり、まず手のひら当ての結び目に触れた。結び目はしっかり締まっていたが、それでも二度つまんだ。
「あの日、どうして気づかなかったんだって、聞きましたよね」と魏策は言った。許慎がうなずくと、魏策はさらに、自分が認めれば周同の頭には若い弟子が測り間違えたことしか残らないと、最初からわかっていたのかと聞いた。彼は、わかっていたと答えた。魏策は手に持っていた短い木を置いた。握っていた端が少し湿っていた。彼は罵りもせず、もういいとも言わず、奥へ刃を取りに行くから、よけてくださいとだけ言った。
許慎はその場にしばらく立っていた。任泉は魏策を呼び戻さず、振り返って店の戸口にあった木の櫛を取り、あいつが今しがた置き忘れたものだから、卓の隅に置いてやればいいと言った。許慎は櫛の歯が一本、すでに丸く削られているのを見た。ずっと昔、自分も母に櫛を作ったことを思い出した。歯を詰めすぎて、一度梳くたびに髪が何本か切れたのに、母はいい櫛だと言い張った。
彼は櫛を置いてから、薬屋へ周同を訪ねた。もとの戸は半分開いていた。下の軸受けは安定し、上の軸は木の中に隠れ、普段使う人が気に留めることももうないだろう。周同は左手で薬種を一つ量っていた。分銅を置くのに少し手間取り、手伝いが代わろうとしたが、首を振って先に裏からふるいを持ってくるように言った。許慎は量り終えるのを待ち、それから帳場の前へ進んだ。
周同は聞き終えて、どうして今になって話すのかとは聞かず、右手に巻いた布をほどいて台の端に広げた。二本の指はもう腫れが引いていたが、半分まで曲げるとまだこわばった。小さな鋏で試しても細紐を切れず、左手に持ち替えてようやく切れた。許慎はその切り口を見つめた。何もかも言葉で明らかにしたところで、その手を元どおり返せるわけではないとわかった。
「返してくれた千二百文は受け取った」と周同は言った。「戸も使っている。この先、手がどうなるかは、斉先生も断言しない。春の窓の仕事はもうほかの人に頼んだ」そう言い終えると、目を落として外で待つ女に薬包を押し出した。許慎が雨の中で新しい戸をどうしたか、話す余地はなかった。許慎は言葉をのみ込み、出ていくときに片方の戸をそっと閉めた。
薬屋を出る前、許慎は裏の廊下でしばらく足を止めた。かつて陳生の割れた壺を押さえていた細い腰掛けはまだあり、その下から中空の竹栓が一つ、足元まで転がっていた。彼は拾い上げ、薬籠に戻してやろうと思ったが、手を伸ばす前に店の手伝いに何なのか聞いた。古いふるいから落ちたもので、もう使わないから薪籠へ放り込めばいい、と手伝いは言った。彼は言われたとおりにし、竹栓が籠の底に落ちて一度鳴るのを聞いた。
街角で蒸し餅を売る女は、相変わらず彼を「許親方」と呼び、今日は幾つ買うかと聞いた。彼は肉餡なしで二つと言い、もとから持ち歩いていた細々した工賃から餅代を払い、錐を売った金には手をつけなかった。女は値上げを嫌がっていると思い、わざわざ割って生地の厚みを見せた。湯気が顔に当たった。彼はふいにひどい空腹を覚え、木の下に立って一つ食べ、もう一つは家へ持ち帰った。蓮根色の布を見に回ることはなかった。
家に帰ると、残り百八十文から百六十文を取り分け、錐を拭くあの油布で別に包んだ。洪店主の長い材はすでに傷めてしまった。借りはこの百六十文で、あの戸をもう作らないからといって、誰も取り立てに来ない口先だけの話にしていいものではなかった。二十文は普段の銭袋に残した。飯も紙も道中の水も、やはり誰かが本物の銭で買うのだった。
夕方、許慎はこのことを母に話した。次に一緒に山へ行くときは、先に石口で金を返し、それから古い家のことを話そうと言った。阿穂は洪店主にあと何日か待ってもらえないか頼んだのかと聞いたが、許慎は今日でもう足りたから、これ以上待たないと答えた。阿穂は布包みに手を伸ばし、中の銅銭に触れて、また引っ込めた。息子の頭をひと撫でしたいようだったが、息子はもう母よりずっと背が高かった。
翌日、任泉は魏策に修理の必要な小さな腰掛けを持たせた。客は十二文払うと言っており、許慎が引き受けるなら店が三文取り、残りは彼の取り分だという。脚が割れていたので、ほぞを切り直す必要があり、膠を少し足したくらいではしっかり留まらない。魏策は言い終えるとすぐに帰ろうとしたが、許慎は呼び止め、来たくなかったのかと聞いた。魏策は答えた。「親方に頼まれたのは腰掛けを届けることだ。おまえの相手をすることじゃない」
許慎はうなずき、小椅子を受け取って膝に載せた。割れ目は深く、ばらすときに横桟を一本だめにしたので、手元に取っておいた短い材で作り直すしかなかった。九文の手間賃からは、この小さな木片の分も差し引かなくてはならない。午後いっぱい働くのを見た阿穂は割に合わないと代わりにぼやき、彼自身もそう思った。だが最後まで鉋をかけ、床に置いた椅子がぐらつかないと分かると、やはり手を上げて座面をそっと撫でた。
夜、腰掛けの脚を何度か試し、阿穂も座ってみたし、方暁も座りにきた。方暁はきれいじゃないと言って、どうして猫を彫らないのかと聞いた。許慎は、もともとこの腰掛けに猫はいなかったし、お客も頼んでいないと言った。方暁はがっかりした目で彼を見ると、戸口にしゃがみ、石で地面に猫を一匹描いた。尻尾は三重に巻いていた。黄豆がその輪を嗅ぎながら歩いてきて、ちょうど猫の頭の上に座ったので、方暁は笑い転げて桂娘の胸に飛び込んだ。
三日目に腰掛けを届け、取り決めた九文だけ受け取った。客は腰掛けを抱えて帰った。戸の仕事について尋ねもせず、もっと大きなものを作ってくれと引き留めもしなかった。通りで春菜を売っていたので、三文でひと束買った。帰り道、葉の間にたまっていた水で裾が濡れた。残りの六文を財布に入れると、錐を売って別に取っておいた二十文と合わせて二十六文になった。翌日、劉汀が町に来たので、許慎は二十四文を渡した。借りた一日分が十二文、遅れた一日分も十二文。ようやく荷車代を払い終えた。劉汀は数えて受け取り、あの日、油屋で下ろしそびれた一回分の桶は、もう別の人に頼んだとだけ言った。
杜茵が東の部屋から出てくると、許慎は椅子から外した傷んだ木を二山に分けていた。硬いものは取っておき、腐ったものは薪にするのだった。長い錐は売ったのかと聞くと、売ったと答えた。彼女はしばらく脇に立ってから、まだ使えそうな端材を指し、指ぬきを入れる小箱が作れるなら買いたいと言った。どのくらいの大きさかと聞かれ、手で示すと、今日中に欲しいわけではないから、先に今請けている仕事を仕上げて、とすぐにつけ加えた。
許慎は地面にしゃがみ、小さな木切れの裏に木炭で短い線を三本引いた。今度は先に葉を描き足すことも、贈ると言うこともなかった。蓋は引いて開けるほうがいいかと聞くと、杜茵はしゃがんで手で形を示し、跳ね上げる蓋がいい、手に糸がついていても持ち上げやすいからと言った。二人の手の影が同じ木切れに落ち、どちらも急いで顔を上げようとはしなかった。
· この章 終 ·
本書はAIの支援を受けて独自に執筆した作品で、劉長卿の『逢雪宿芙蓉山主人』と当サイトの短篇『雪の夜、戸を開けて待つ』をもとに長篇化しました。人物、県城、経路、筋立てはいずれも唐代の趣を持つ架空の創作であり、原詩の翻訳や詩人の伝記ではありません。
コメント欄
コメントを読み込んでいます…
何か伝えたいことは?ログインしてコメントに参加 →