古風な世情長篇小説
茶店に積まれた戸の材木
酷無極 · AI創作 · 4865 字 · 約 13 分
その年の暮れ、阿穂は新しい部屋にごく小さな赤い紙を貼った。方桂娘が紙を裁った残りをもらい、庭を使う人のうち字の書ける人についでに書いてもらった。字はあまり整っていなかったが、貼る手つきは真剣だった。黄豆がのぞきに来て、外に反った赤い紙の角が鼻に当たり、後ずさった。阿穂はそれを見て、一人で長いこと笑った。
大晦日、許慎が食事に来た。持ってきた肉は例年山へ帰るときより少なかったが、母は何も聞かなかった。彼はまず小鋏を研いでやった。研ぎ終わると、あの二百三十文はちゃんとしまったかとふいに聞いた。阿穂は、大丈夫だよ、と即座に答えた。まるで金のほうが人より寒さに強いとでもいうようだった。これからはあまり手をつけないようにと言うつもりだったが、先に母の金に手をつけたのは自分だと思い出し、鋏を返すだけにした。年越しの膳に二度目の沈黙は持ち込まなかった。
食べ終わると、方桂娘が中庭で誰かに鍋を見てくれと声をかけた。杜茵は服を一枚取りに戻り、戸は少しの間開いてまた閉じた。許慎は母の湯を取り替えてから庭に出て、魏策が通りを過ぎるのを見た。その手には粗い木綿の手のひら当てが一組あった。青年も彼を見るとうなずき、妹が縫ったんです、と言ってそのまま歩いていった。以前のように足を止め、縫い目を見てくれとは言わなかった。
正月、許慎はいくつか細かな仕事をした。腰掛けを直し、戸の桟を継ぎ、古い戸棚に目立たない縁の押さえを一本足した。任泉(レン・チュエン)が回してくれた仕事もあれば、腕のよさを覚えていた昔の客からの仕事もあった。どれもまず現物を見なければならず、代金も自慢するほどではなかった。阿穂は新しい戸をいつ作るのか聞きたかったが、あの六百文を渡したことで急かされていると息子が思うのも嫌で、食事のときに、このところ乾いた日が続くけど、材木は傷まずに置けているかね、と遠回しに聞くだけだった。
薬屋の元の戸は、直してからひと月、がたつきもなく使われていた。許慎はたまに通ると、まだ下の受け座に目をやった。傾いていないのを見ていったんほっとするが、店の中で周同が左手で紙を押さえているのを見ると、心からは安堵できなかった。新しい戸を別に作る件は、客の誰一人として急かしてはいなかった。ただ彼だけが、戸口を通るたびに、自分の仕事のよさをまだ人に見てもらえていないと思った。
二月三日、彼はまず茶小屋へ行った。去年、自分の口で約束した日で、もう先へ延ばせなかった。任の店の外隅にも新しい材が入り、自分の数本は移さねばならない。石彦に六十文で運んでもらい、まず車に載る板と枠材を小屋へ届けた。石口の材木場には長いのが数本別に残してあり、自分で取りに行くことになっていた。
石彦はいつもどおり、長い材を車の後ろに引きずるのはだめだと言った。曲がるときに振れて人を打ちやすいから、初めから二度に分けたほうがいい。ほんの少しを惜しんで、道の真ん中で身動きが取れなくなっては困る。許慎は分かったと答えたが、顔が少し熱くなった。今では「分かった」と言うたび、以前はいったい何を分かっていたのかと、また誰かに聞かれるようだった。阿穂は表の小屋の鍵を持って先に行った。息子が着くなり忙しい思いをしなくて済むよう、場所を空けてやろうと思ったのだ。
劉のおばさんが来たとき、戸はもう開いていた。阿穂は古いむしろを何枚も抱え、部屋のどこが乾いていて、どこに長い板が置けるか見比べていた。彼女を見ると、まず笑って、慎はもうじき来る、ちょうど鍵を借りられてよかったと言った。劉のおばさんは床に増えた木片を見て、窓を直す材だと思い、長腰掛けを脇へやるのを手伝った。窓を直すなら材を持ってくるのは当たり前で、友人が先に着いていても何ということはないと、ただそう思っていた。
荷車が茶店の前に止まり、板が一枚ずつ運び込まれて、ようやく小窓一つには釣り合わない量だとわかった。大秀はちょうど鍋に水を入れて試していたが、顔を上げるなり、こんなにあっては店を半分壊すつもりかと訊いた。許慎は慌てて、窓にはそんなに使わない、別に戸を作り直すので、しばらく置かせてほしいと言った。阿穂はさらに素早く言葉を継いで、薬屋のあの戸はきちんと仕上げなくちゃいけないし、町の職人のところに積んでおいても邪魔になる、と言った。
劉のおばさんは、客がまだちゃんとした戸を待っているのだと受け取り、顔に出ていた不機嫌さをいくぶん抑えた。薬屋で何が起きたかは知っていたが、もとの戸はとっくにしっかり直してあるとも、目の前の戸が、許慎自身の諦めきれない余分な思いつきだとも知らなかった。許慎は母の「ちゃんと作らないとね」を聞き、言葉が足りないと分かっていたが、まず手にした板を倒れないように立てかけ、すぐには話をほどかなかった。
窓の修理のほうは早かった。古い角の欠けたほぞをきれいに整え、乾いた木片を継ぎ、新しい横桟を入れると、その隙間から風がまっすぐ吹き込むことはなくなった。手慣れた仕事をすると、許慎の手はようやく混乱から抜け、よく知る場所に帰ってきたようだった。薄い鉋屑がひと巻き上がり、落ち、またひと巻き上がる。一削りごとに人にどう思われるかを先に考える必要はなかった。劉のおばさんが窓板を押してみると、きっちり閉まり、顔もつられて明るくなった。
劉おばさんは手間賃を三十文出したが、許慎は受け取らなかった。もともと春になったら直しに来ると言ったのは、新しい商いにするためではなかった。今は場所まで借りたのだから、この小さな銭の束はなおさら受け取りにくかった。劉おばさんは二度差し出し、それでも取らないと見ると、ひとまず置いておいて、あとで勘定しようと言った。阿穂はそれを見て、息子も確かに働いたのだから、小屋に木を何本か余計に置かせてもらうのも、身内が人の好意に甘えてばかりいることにはなるまいと思った。
互いに言い尽くさなかったこの勘定を、誰も卓上に広げなかった。許慎が金を受け取らなかったのには、彼なりの気まずさがあった。阿穂は場所を借りる代わりになったと思い、劉のおばさんはただ今はそれ以上無理に勧めなかっただけだった。窓がきちんと閉まっても、言い残したそれぞれの思惑まで一つに収まることはなかった。かえって皆が、わずかに引っかかるところはあとで聞けばいいと思った。
だが大秀(ダーシウ)はあと回しにできなかった。あの大鍋を古いかまどに載せると、鍋の縁は半分しかかからず、反対側はとりあえず煉瓦で受けるしかなかった。許慎に見てくれと頼む声は、窓の修理を頼んだときと変わらず自然だった。彼はしゃがんでしばらく見た。木の柄は替えられるが、かまどの鍋受けは組める職人を探さなくてはならない、木を一枚削って差し込めば済むものじゃない、と言った。
大秀は顔を上げ、阿穂を見た。阿穂はあの日、あんな小さなかまどのことで心配させはしないと言ったのを思い出し、顔を赤くした。慌てて、初めからまず見ると言ったんで、ほかの人を頼まなくていいなんて言ったかい、と返した。自分では少し言葉に幅を持たせただけのつもりだったが、一月余り待った大秀には、急に話が変わったように聞こえた。大秀はその場で言い争わず、鍋を下ろして地面に置いた。裾はすっかり灰まみれになった。
許慎は、母がここでいたたまれない思いをしているのを知っていた。自分も窓を直すほかは何もできないと思われたくなかった。町で知っている左官にまた当たってみる、来られるか、いつ来られるかは、まず聞かなければ分からないと言った。劉のおばさんが話を継ぎ、店開きまでまだ半月あるから、今すぐでなくていいと言った。大秀は鍋の縁をぐるりと手でなぞり、もう何も言わなかった。今度こそ決まると思っていたことは、また形のない待ち時間の中に戻された。
昼飯に劉おばさんがこしらえたのは、豆ご飯に湯、固く絞った漬物がひと皿という質素なものだった。阿穂は彼女が何度もかまどへ足を運ぶのを見て、いつもの癖で立ってよそおうとしたが、膝がこわばり、先に手が卓をつかんだ。劉おばさんは座っていな、自分でやるからと言った。その口調に柔らかさはなく、以前よりいくらか疲れているようだった。阿穂は座っているしかなかった。前は自分でできたことを、今ではいくつも脇から人がするのを見ていなくてはならないとふと気づくと、気が楽なばかりでもなかった。
食後、許慎は材を置く場所を測りにいった。新しい扉二枚をここで組むなら、部屋の半分を占め、作業台も置かねばならない。背後から劉のおばさんが、二月十七日には店を開ける、そのとき人はどこに座るのか、材を全部ここに置いておくわけにはいかないと言った。許慎は慌てて、そんなにはかからない、長材が届けば数日で組めると答えた。その「数日」は古い扉の事故の前と同じようにするりと口をついた。自分でもそう聞こえたが、今さら「分からない」と言い直すことはできなかった。
大秀が長椅子を窓の下に戻すと、板の束にちょうど突き当たって、それ以上押せなかった。顔を上げると、阿穂は、とりあえずそこへ寄せておいて、明日、慎が来たら奥へ片づけさせようと言った。わざと人に回り道をさせるつもりはなかった。ただ、そばにある木はどれも自分の六百文につながっていたから、いつの間にか人が座る椅子のことより先に、木の落ち着き先を考えていた。
劉のおばさんは長椅子を戸口に横向きに置き、人が通る場所は要るからねと言った。叱りもせず、材を外へ運び出しもしなかったが、阿穂には今日の友の言葉に昔の柔らかさが欠けているように思え、胸の内でむっとした。こんなに長く隣同士だったのに、町の者が難しい仕事をしようという段になって、どうして急に椅子を置く向きまできっちり分けなければならないのか。そこから先は聞かなかった。聞いたところで、劉のおばさんにもそれなりの理があると、うすうす分かっていたからだ。
許慎は去る前に、また新しい窓を試した。仕上がったものをみんなに見てほしいようだった。窓はすっと閉まり、確かに出来がよかった。劉のおばさんはうなずいて礼を言ったが、奥で大秀(ダーシウ)が鍋を洗っていて、その水音に礼の声は消えた。阿穂は息子のそばに立ち、春の茶が始まったら自分も座りに戻ってくると言うつもりだったが、板の山に目が落ちると、戸が出来たらまた来る、という言葉に変わった。
町へ帰るとき、二人は石彦(シー・イエン)の車には乗らなかった。車夫は続けて石口へ別の客の荷を積みに行くので、いつまでも許の家の都合に合わせてはいられなかった。許慎は母を支えて乗合車の停まる所まで行き、しっかり座ったのを見届け、自分は道具を背負って道をゆっくり歩いた。一人分の車代が浮いた。阿穂は車の縁越しに息子を眺め、突き出た新しい長錐の柄がもうほこりをかぶり、買ってきた日ほどには光っていないことに気づいた。
もうこの新しい戸は作らなくていいと言いたかったが、口にはしなかった。先に金を出し、きちんと仕上げなくてはと先に代わって言ったのは自分だ。今さらやめろと言えば、この六百文が息子をあちらへこちらへ引っ張る縄になったようだった。ただ空の手提げ籠を抱きしめた。中には正月のご馳走もなければ、今すぐ返せる過ちがひとつ入っているわけでもない。指で、籠の縁のすり減って平らになったささくれを何度もこするしかなかった。
夜、許慎は店の外に戻り、別に描いた戸の図面を取り出した。水の模様は前の図より繊細で、草の葉も姿が整っていた。茶店に取りつけたばかりの小窓を思った。あれは三度試しただけで使ってもらえた。自分が作ったとわかる箇所は、あんなにたくさん要らなかった。それでもそんな考えは少しの間しかとどまらず、手はまた新しい縁飾りをなぞった。誰からも急かされていない一枚の戸のために、もうこれほど大勢が自分のものを先にどけてくれたことが、まだ信じられないかのようだった。
· この章 終 ·
本書はAIの支援を受けて独自に執筆した作品で、劉長卿の『逢雪宿芙蓉山主人』と当サイトの短篇『雪の夜、戸を開けて待つ』をもとに長篇化しました。人物、県城、経路、筋立てはいずれも唐代の趣を持つ架空の創作であり、原詩の翻訳や詩人の伝記ではありません。
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